【企業訪問記】経営者の仕事は決断すること、そしてベストを尽くすこと

(株)キーペックス 代表取締役 齊藤 進氏
(千葉西支部)

 三寒四温を繰り返しながら春に向かう3月上旬、千葉みなとで倉庫業を営む(株)キーペックスを訪ねました。同社は企業の財務諸表等の重要文書を保管するサービスを中心に、冷凍冷蔵保管事業や個人向けトランクルーム事業を展開しています。

 歴史を辿ると、齊藤氏の祖父が朝鮮戦争時に麻袋販売の事業を立ち上げ、祖父の弟がそれを取り扱う倉庫会社を立ち上げ、父はその倉庫会社で働いていました。業績は堅調でしたが第2次オイルショック時に預かるものがなくなってしまい、お客様から「荷物はないが預けたい文書はある」という声を受けます。しかし当時はまだ重要文書を他社に預けることは一般的ではなく、会社から反対されましたが、ストックビジネスの先見性に気付いた父が、文書保管に特化した倉庫業として独立した会社が(株)キーペックスです。

 齊藤氏は25歳の時に同グループ会社に入社しますが30歳の時に体調を崩して退社し、自分のやりたいことをやってみようと世界一周の旅に出ます。韓国のプサンからスタートして7年目、ブラジルのアマゾン川付近で体調を崩し、緊急手術。一命を取り留めましたが予断を許さない状況が続き、自然と「日本に帰ろう」と思えました。帰国後は体調のこともあり主夫として子育てをしていましたが、父からもう一度やってみないかと声を掛けられ、(株)キーペックスに入社、その4年後に代表を継ぎました。

 現在力を入れているのは人材育成。いずれは社員への事業承継を考え、そのために経営者としての視点を養って欲しい、と個人向けトランクルーム事業の子会社社長に幹部社員を登用しました。それは自身が専務時代に、社長である父が大きな投資をして冷凍冷蔵保管サービス事業を始める時に、出来ない理由を並べて批判していた経験からでした。先代から、じゃあこの事業に関して全権お前に任せると言われ、ハッと気付いたそうです。「社長の仕事は目先ではなく、20年先を見据えて会社が存続するためには何が必要かを考えること。そしてその選択が正しいか、その時点ではわからないことがほとんどで、その中で決断してベストを尽くすこと。社員にもそのような経験が得られる機会を作って、視点を共有していきたいと思います」先見性を持って業界の常識に挑戦する同社の取組みから、多くの学びを得ることのできた訪問となりました。

(事務局 田中)

◆会社概要…所在地:千葉市中央区中央港2-4-4 資本金:9,960万円 従業員数:74名(うちパート・アルバイト23名) 事業内容:書類保管、配送、書類保管関連サービス、物流倉庫、配送代行

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