【輝く中小企業の取り組み】地域産業と共に生きる(株)あかうみ~ドライバーが憧れられる職業となることを目指して~

(株)あかうみ 代表取締役 赤海 章義 氏(成田支部)

赤海 章義氏

スイカ売りから運送業へ

 (株)あかうみは千葉県成田市に拠点に置く運送会社であり、一般貨物運送から産業廃棄物収集運搬、旅行業、倉庫業と幅広く展開しています。100台以上の多種類のトラックと9台の観光バスを保有し、顧客の様々なニーズに応えています。

 同社は商売人気質を持つ同氏の父が、仕入れたスイカを地元住民に売り歩くところから始まりました。関係が築かれる中で、徐々に荷運びの依頼が増え、「運ぶ仕事」へシフトしていきます。大きく形を変えたのは昭和50年、成田国際空港の開港を機に前身の「(有)赤海産業リース」を設立しました。空港の物流や大規模工場の建設、それに伴う人口増加による需要に応えながら規模を拡大していきました。

3つの出来事から得た教訓

 順調に拡大していく同社を襲ったのは「原油価格高騰」と「リーマンショック」。当時の主要顧客は空港関連と周辺ホテルのリネンサプライ(リネンをクリーニング付きでレンタルするサービス)の配達でした。経費増大に加え、大不況の到来で物流や人の動きも滞り、同社もそのあおりを受けます。

 そして着手していた新規事業の失敗も大きく響きました。同氏は1991年にドライバーとして同社に入社し、2000年に専務に就任していました。自身でも無謀だったと揶揄するほどの新規事業の失敗と2つの外的要因に一度に襲われることによって同社は危機的状況に陥ります。経費削減や給料減額等でどうにか乗り越えた後に強く胸に残ったのは「経営者の責任の自覚」と「経営姿勢の重要性」。そして「二度と繰り返さないように、盤石な経営基盤を築くこと」を胸に、社内外の見直しが始まります。

リスク分散と定期運搬へのシフト

 運送業界の経常利益率は一般的に3~5%と言われています。そのため、運搬数を増やして売上高を増やすことと、空港関連の比重を下げるために定期運搬物へシフトしていきます。

 例えば産業廃棄物収集運搬事業、中でもペットボトルなどの飲料容器の回収です。回収車は平ボディ型が一般的ですが、積み下ろしに人がのぼる必要があるため危険だという相談を受けます。そこで大型ウイングトラックを多く保有している同社は、大型のカゴに集まったペットボトルを入れ、それにブロックごとに詰め込むことで、大量にそして安全に運搬する術を社員が発見します。ウイングを閉じてしまえば、回収車だとは思いません。その他にも長距離運送ではなく、比較的近い地域内の往復輸送に力を入れていきます。

リーダー・幹部育成

 会社規模が拡大するなかでリーダー・幹部育成にも取り組みます。個人作業かつ職人気質のあるドライバーの管理や会社の顔となる営業をする重要なポストとして、人事評価制度や役職定義を明確化しました。研修も定期的に行い、能力や資質向上にも努めます。現在、採用活動は各部門の責任者が行い、相談も部門同士で行うことも増えたと言います。「幹部達の意識変革を感じられたのはコロナウイルスがまん延した時です。その時も厳しい状況でしたが、皆で乗り切ろう、互いに応援しあおうという風土が生まれた気がします。それが発展し、現在では常にどうすればもっと良くできるかを自然に考えてくれるようになりました」。

地域産業の発展とドライバーのブランド化

 地域産業が大きく今後を左右する運送業。成田市では成田国際空港の拡張が計画され、更なる活性化と運送業の需要増加が予想されています。「以前の運送業界では労働環境は後回しにされていたところがありましたが、徐々に整備され、イメージも払しょくされはじめています。更にドライバーも不足していることから、社員を守れる仕事を選抜していく必要があります。特に大型車になればなるほど専門職化していき、付加価値として会社の強みとなっていくでしょう。自社が発展することで地域が更に賑わい、地域経済全体が活性化していく。そのためにもドライバーが憧れられる職業になり、同社も〝若者に目を向けられる会社″を目指し、邁進していきたいと思います」。

(事務局 関根)

♦会社概要…事業内容:一般貨物運送、一般貸切旅客運送、旅行業、倉庫業、陸送業 所在地:成田市南羽鳥570-66 資本金:1,000万円 従業員数:146名(うちパートアルバイト6名) 入会年:2010年

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