千葉県中小企業の振興に関する条例

平成十九年三月十六日
条例第五号
千葉県中小企業の振興に関する条例
千葉県の中小企業は、県内企業の大多数を占めており、様々な経済的社会的環境の変化に応じ た多様な事業活動を通じて、本県経済の成長を支える存在として、また、地域社会の担い手として、県民生活の向上に大きく寄与してきた。
本県の持続的な発展を確固たるものにするためには、こうした中小企業の役割と重要性を県、 市町村、事業者、経済団体、大学、そしてすべての県民が認識し、各々がその果たすべき役割を 十分踏まえながら緊密に連携し、県を挙げて中小企業を育てていく体制を築いていくことが何よ り重要である。
しかし、近年、中小企業を取り巻く環境は、これまでにない大きな変化を遂げつつある。経済 のグローバル化は、国際的にも、国内的にも、厳しい企業間競争をもたらした。加えて、急速な 少子高齢化の進展、そしてこれに続く人口減少時代の到来は、消費の減少を招き、中小企業の事 業活動を一層厳しいものにするおそれがある。そのため、これまで地域社会を支えてきた中小企 業の活力の低下も懸念される。
このような中で、中小企業の多様で活力ある成長発展を促進するためには、中小企業者の自主 的な努力を基本としつつ、厳しい変化を乗り越えるための果敢な挑戦に取り組む中小企業者を幅 広く生み出す環境づくりを早急に進めることが必要である。また、中小企業の事業展開の基盤と なる地域を活性化することが地域の経済活動の拡大につながり、さらにこのことによって中小企 業の成長発展を促し、地域を一層活性化するという好循環を生み出していくことも重要である。
こうした取組により生まれる元気な中小企業は、豊かで住みやすい千葉県づくりの原動力にな るものと確信し、中小企業の振興を県政の重要な課題に位置付け、ここに千葉県中小企業の振興 に関する条例を制定する。
(目的)
第一条 この条例は、中小企業が本県経済において果たす役割の重要性にかんがみ、中小企業の振 興について、基本理念を定め、及び県、中小企業者その他の関係者の役割等を明らかにするとと もに、中小企業の振興に関する施策の基本的な事項を定めることにより、中小企業の振興に関す る施策を総合的に推進し、もって県の経済の健全な発展及び県民生活の向上を図ることを目的と する。

(定義)
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところに よる。
一 中小企業者 中小企業基本法(昭和三十八年法律第百五十四号)第二条第一項に規定する中 小企業者で、県内に事務所又は事業所を有するものをいう。
二 産学官民の連携 事業者、大学等(大学、高等専門学校及び大学共同利用機関その他の研究 機関をいう。以下同じ。)、国、県若しくは市町村又は経済団体その他の団体若しくは県民がそ れぞれ有機的に連携することをいう。
三 地域づくり 地域の歴史、文化、技術、人材、自然環境その他の資源を活用することにより、 その地域の関係者が、単独で、又は連携して、地域の課題を解決し、又は地域を活力に満ちた 魅力あるものにしていく諸活動をいう。
(基本理念)
第三条 中小企業の振興は、経済的社会的環境の変化に対応した経営の向上及び改善を目指す中小 企業者の自主的な努力を促進することを旨として図られなければならない。
2 中小企業の振興は、中小企業の経営の向上及び改善と地域づくりによる地域の活性化とが互い に密接な関係を有することにかんがみ、これらが相乗的に効果を発揮することを旨として図られ なければならない。
(県の責務)
第四条 県は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、中小企業の振 興に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
2 県は、基本理念にのっとり、中小企業の振興に関する施策を実施するに当たっては、その内容 に応じて産学官民の連携を図るよう努めなければならない。
(中小企業者等の努力)
第五条 中小企業者は、基本理念にのっとり、経済的社会的環境の変化に対応して、自主的に経営 の向上及び改善に努めなければならない。
2 事業協同組合、商店街振興組合その他の中小企業者の事業の共同化のための組織(以下「共同 化のための組織」という。)は、基本理念にのっとり、中小企業者とともに、中小企業の経営の 向上及び改善に主体的に取り組むよう努めるものとする。
3 中小企業者及び共同化のための組織は、基本理念にのっとり、地域づくりに取り組むことによ り、地域の活性化に資するよう努めるとともに、県が行う中小企業の振興に関する施策の実施に ついて協力するよう努めるものとする。

(中小企業に関する団体等の役割)
第六条 中小企業に関する団体(共同化のための組織を除く。)は、基本理念にのっとり、中小企 業の経営の向上及び改善に積極的に取り組むとともに、県が行う中小企業の振興に関する施策の 実施について協力するよう努めるものとする。
2 中小企業者以外の者であって、その事業に関し中小企業と関係があるもの(大企業者(中小企 業者以外の会社又は個人であって事業を営むものをいう。次条において同じ。)及び大学等を除 く。)は、基本理念にのっとり、県が行う中小企業の振興に関する施策の実施について協力する よう努めるものとする。
(大企業者の役割)
第七条 大企業者は、基本理念にのっとり、地域づくりに取り組むことにより、地域の活性化に資 するよう努めるとともに、県が行う中小企業の振興に関する施策の実施について協力するよう努 めるものとする。
(大学等の役割)
第八条 大学等は、その人材の育成並びに研究及びその成果の普及が中小企業の振興に資するもの であることにかんがみ、自主的に地域づくりに取り組む場合には、基本理念にのっとり、これを 行うよう努めるものとする。
(県民の理解と協力)
第九条 県民は、中小企業の振興が県の経済の健全な発展及び県民生活の向上に寄与することを理 解し、中小企業の振興に協力するよう努めるものとする。
(市町村への協力)
第十条 県は、市町村が行う中小企業の振興に関する施策について、市町村に対し、情報の提供、 技術的な助言その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(基本方針)
第十一条 知事は、基本理念にのっとり、中小企業の振興に関する基本的な方針(以下「基本方針」 という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次の各号に掲げる事項を定めるものとする。
一 中小企業の振興に関する基本的方向
二 中小企業の振興のため総合的に講ずべき施策
三 前各号に掲げるもののほか、中小企業の振興のために必要な事項

3 知事は、基本方針を定め、又は変更するに当たっては、中小企業者その他の関係者の意見を聴 くとともに、あらかじめ、その趣旨、内容その他の必要な事項を公表し、広く県民の意見を求め なければならない。
4 知事は、前項の規定により提出された意見及び情報を考慮して基本方針を定め、又は変更しな ければならない。
5 知事は、基本方針を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(創業等への意欲的な取組の促進)
第十二条 県は、経済的社会的環境の変化に即応した、創業及び中小企業者の経営の革新その他の 経営の向上への意欲的な取組を促進するため、経営に関する情報の提供、技術力の向上に関する 支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
(連携の促進)
第十三条 県は、産学官民の連携が中小企業の新たな事業の創出、技術力の強化等に資することに かんがみ、中小企業を中心とした産学官民の連携の促進を図るため、関係者の交流の機会の提供、 共同研究の実施への支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
(経営基盤の強化の促進)
第十四条 県は、経営資源の確保が困難であることが多い中小企業者の事情にかんがみ、その経営 基盤の強化を図るため、資金供給の円滑化、相談及び支援を行う体制の充実その他の必要な施策 を講ずるものとする。
(人材の確保及び育成の支援)
第十五条 県は、中小企業の事業の展開に必要な人材の確保及び育成を図るため、就業の支援、職 業能力の開発その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、学校教育における勤労観及び職業観の醸成が中小企業の人材の確保及び育成に資するこ とにかんがみ、児童及び生徒に対する職業に関する体験の機会の提供その他の必要な施策を講ず るものとする。
(地域づくりによる地域の活性化の促進)
第十六条 県は、中小企業の経営の向上及び改善に相乗的に効果を発揮するような地域づくりによ る地域の活性化を促進するため、地域の資源を活用した新たな事業の創出の支援、商店街の活性 化を図るための事業の支援その他の必要な施策を講ずるものとする。

(中小企業振興施策の公表等)
第十七条 知事は、毎年一回、県の中小企業の振興に関する主たる施策の実施状況を取りまとめ、 これを公表するものとする。
2 知事は、前項に規定する中小企業の振興に関する主たる施策の実施状況について中小企業者そ の他の関係者の意見を聴くものとする。
3 県は、前項の規定により聴取した意見を考慮して、中小企業の振興に関する施策をより効果的 なものにするよう努めるものとする。
(施策実施上の配慮)
第十八条 県は、施策の立案及び実施に当たっては、当該施策が中小企業の経営に及ぼす影響につ いて配慮するよう努めるものとする。
(受注機会の確保)
第十九条 県は、工事の発注、物品及び役務の調達等に当たっては、予算の適正な執行に留意しつ つ、中小企業者の受注の機会の確保に努めるものとする。
(調査及び研究)
第二十条 県は、中小企業の振興に関する施策を効果的に推進するため、必要な調査及び研究を行 うものとする。
(財政上の措置)
第二十一条 知事は、中小企業の振興に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずる ものとする。
附則
この条例は、公布の日から施行する。