【企業訪問記】「将来なくなる職業」で生き残る「人の力」

(株)協和デンタルラボラトリー 代表取締役
木村 健二氏(東葛支部)

 (株)協和デンタルラボラトリーは、歯科技工士を束ねる専門家集団です。8割近くが個人で仕事をしている業界で、同社は木村社長の一代で社員74名に成長。千葉県「千葉のちから中小企業表彰」や、経営革新「優秀企業賞」など様々な賞を受けています。

 1984年に創業した当初は、保険適用範囲内の仕事を請け負っていましたが、高い技術を発揮しても価格が見合わず、なかなか利益が確保できない状態が続きました。休日返上で働く状況では従業員も定着せず、「このままではいけない」と始めたのが自費診療の分野です。 

 中でもインプラント(人工歯根等)を先駆けて導入したことは同社の大きな飛躍となりました。インプラントは周囲の健康な歯に負担をかけずに、見た目も美しい歯を作ることが可能です。仕事を通して「患者を笑顔にする」という原点を社員と共有し、勉強会などを開催しながら技術を磨いてきました。同友会の経営指針セミナーで経営理念を確立したのもこの頃です。

 実は、歯科技工士は「人工知能の発達で将来なくなる職業」に挙げられています。しかし同社では毎年複数名を新卒採用しています。それは、ITを「使いこなす」技術力と、柔軟なサービス力は人にしか発揮できないという信念がある故です。最先端設備を取り入れ、九州・沖縄支社とオンラインで仕事をしていますが、そのIT活用のベースには人間関係があり「気」が介在する、というのが木村社長の考え。毎年、採用した社員の実家に必ず家庭訪問をし、想いを伝えています。現在は外国人雇用に取り組み始め、カンボジアやベトナムの家庭訪問もしています。

 木村社長は、鉄工所の経営者を父に持ち、厳しい経営環境の中で引越しを十数回経験したり、両親と離れて暮らした経験もあるそうです。世間的に見ると大変な子供時代ですが、「母の愛情と、苦労を苦労と思わないような母の生き方のせいか、貧しくても楽しかった」と語ります。会社を成長させてきた経緯にも同様のことが言えるそうです。木村氏の経営哲学の原点を垣間見たような気がしました。

(事務局 小山)

◆会社概要…所在地:松戸市新松戸3-260-1  資本金:360万円 従業員数:74名 事業内容:歯科技工・インプラント専門

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