一本一本に心をこめて ―色あせることのない創業者の想い

(株)アド　代表取締役　宮崎富美氏(市川浦安支部)　右

　JR柏駅前にてテニス用品・用具の販売をしている(株)アドを訪問しました。同社は1978年に創業し、1984年に三郷市から柏市に移転、以後テニスを愛好する柏市内外の顧客と長い関係を築いてきました。

　もともとご主人が結婚後、24歳で創業したという同社。夫婦二人三脚で経営をしてきました。「誠実で職人肌」だったというご主人は、ラケットにガット(弦)を張る技術が認められ、当時としては珍しく、日本人で全仏・全英の大会のオフィシャルストリンガー(ガットを張る専門家)として活躍しました。P・サンプラス選手を担当し、同選手の優勝に大きく貢献した実績も持っています。

　そんなご主人ですが、普段から「テニスを初めてやる人にこそ本物のガット張りを提供したい」と語っていたとのこと。「誰にでも、テニスを心から楽しんでほしい」という想いの表れであり、4年前にご主人が病に倒れた際も、「その想いだけは引き継がなければならないと思った」と語ります。

　予想していなかった社長業のバトンタッチは戸惑いだらけで、資金繰りができずに支払いが遅れ、先方から怒鳴られることも。それでも続けてこられたのは、「テニスをこよなく愛する従業員たちが会社を守ってくれたから」だといいます。今や機械が改良されたことで、高い技術を必要としなくなったガット張りも、一本一本手を抜くことなく、顧客の信頼やコミュニケーションにつなげているところに、同社の強みがあります。