【輝く中小企業の取り組み】安心・安全の野菜を届け続ける
椿ファーム 代表 椿 幸久氏(市川浦安支部)
3.11東日本大震災が契機に
今回は匝瑳市で大根やきゅうりをはじめとした野菜の有機栽培を行う、椿ファームを訪ねました。代表の椿氏は元々、大手飲食店に社員として勤務していて、仙台店に赴任中に東日本大震災で被災しました。この経験から自分は一度死んだようなものという感覚があり、これからの人生を改めてどう生きるかを考えた時、何か手に職を持ちたいと思うようになりました。
ツテなしコネなしでの独立
何をやろうかと考えた時、頭に浮かんだのは、深夜テレビで放映されていた震災で畑を全部津波によって流され、呆然と立ちすくむ後姿の農家の方の映像でした。もともと「食」に携わる仕事には就きたかったので、手に職を持つ農家を志すことにしました。退職して3日後、1年間農業スクールで研修。その後も週末に学びながら資金も何もないまま新規で農業を開始しました。その中でも一般的な化学肥料や農薬を使う慣行栽培より、有機栽培の方が自分には面白いと思い、有機栽培農家として就農を開始します。
ツテもコネもない中での独立だったため、販路開拓に非常に苦戦しました。何が地域の住民に必要とされているのかわからず20種類以上の野菜を作り、有機栽培を強みにスーパーの直売所コーナーに置いてもらったり、マルシェでの出展などで知ってもらう取り組みを重ねました。ただ、利益がほとんど出ない出荷形態も多かったそうです。
売りやすいものよりも求められるものを
いつまでも少量多品目では利益が出ないため、品目を絞り、かつ作り手が作りやすいもの・売りやすいものではなく、他の人はやらないけれど求められるものを栽培するように変えていきました。例えば、一般的な慣行栽培と比べて、手間もコストもかかる有機栽培では、大根1,000本納めてはくれるが、10トン納めて欲しいと言われると有機農家はまずやりたがりません。そこに手を挙げ、何とか出荷につなげる仕組みを作る事で、今につながっていると感じるそうです。
「有機栽培だからといって、慣行栽培よりおいしいわけではありません。美味しいものもあれば不味いものもあります。妻と2人で全ての作業を行っているため苦労もありますが、安全かつ、栄養価のある野菜を美味しく作ることは非常に難しく、会社勤めの頃とは違うやりがいがあります」そう話す椿氏の主力商品である大根は、生で食べたら瑞々しい梨のような食感で歯ざわりもよく、火を通せばやさしい甘味のある味わいでした。椿ファームの商品を見かけた際は、ぜひ手に取ってご賞味下さい。
(事務局 田中)
♦会社概要…事業内容:野菜(有機JAS認証)の生産・販売 所在地:匝瑳市内山1290 従業員数:1名 入会年:2020年