【輝く中小企業の取り組み】基本理念をもとに地域のニーズに応える新事業~老犬、老猫介護ホームとデイサービス
(福)豊珠会 本部総務 中村 栄作氏(流山支部)
現在17の介護サービス事業所と2つの包括支援センターを柏市内で展開する社会福祉法人「豊珠会」では、約470人の方が利用されています。
設立は1982年、創設者の中村さんの義祖父(奥様の祖父)が「社会の進展に寄与してきたお年寄りが、安らぎと潤いと生きがいを持てる老後を過ごせること」を願って立ち上げました。しかし設立の翌年に急逝され、中村さんの義父が理事長を引き継ぎ今日に至ります。
常に改善していく風土づくり
基本理念には3つの柱「①人格尊重と処遇向上~私たちは人の心を大切にします、②地域連携~私たちは地域に溶け込みます、③職員の資質向上~私たちは自分の人となりを磨きます」を掲げています。
その実践として、設立当初から利用者の身体と精神を拘束しないことを徹底するとともに、認知症の方が目の届かない場所で事故に遭わないように施設内で様々な工夫をされています。
また、介護による精神的ストレスが招く、職員による利用者への虐待等を防ぐための研修を行い、その内容は毎年更新しています。
事業計画は毎年、理事長が作成し、それをもとに各部署も事業計画を模索するので、現状に留まらず常に改善していく風土が根付いています。
一般企業との区別化
2000年に介護保険法が施行され一般企業の参入が増えましたが、社会福祉法人である豊珠会は、利潤を追求する企業ではできない介護サービスを提供することで区別化できていると中村さんは話します。
その1つに、豊珠会では、受け入れ困難となる重度の認知症や障がい者の方の利用が約8割を占めます。重度認知症等の介護は作業や気配りが通常より必要なため、企業では受け入れないことが多く、社会福祉法人だからできることに、やりがいと誇りを感じていると中村さんは言います。
外国人採用で人材不足の解消を
2011年の東日本大震災をピークに介護業界の担い手が年々減少しています。豊珠会もその影響を受けてはいますが、15年程前から外国人採用にも積極的に取り組んでいます。一般的な仲介業者を介さずに、独自に日本語学校と連携して、特定技能実習生として採用しています。今はベトナムやインドネシアの方が多いとのことです。
ベトナムはいま人口が増え、若者が多く活気で溢れている一方、高齢者が極端に少ない人口構成比です。数十年後には今の日本と同じ状況になることが予想され、そのときに日本での経験を生かして、自国を支えてもらいたいと中村さんは話します。
新事業でさらに地域のニーズに応える
豊珠会では、さらに地域のニーズに応えるために2つの事業を準備しています。
1つが老犬、老猫介護ホームとデイサービス(日帰り通所介護)とショートステイサービスです。動物の医療技術等の進歩で動物も寿命が延び、認知症等が重症化することがあります。豊珠会に通うご家族からの相談も多くあり、理事長が元獣医であったことから取り組むこととなりました。
また、職員の福利厚生として、職員が老犬等をそのデイサービスに預け、働けるようにすることも考えられています。
もう1つが、障がい者の方の働き場(就労継続支援B型事業所)づくりです。豊珠会の事業所で毎日出される400人以上の方の衣服やシーツ等を洗濯する工場を設ける予定です。B型という形態では、仕事の単価が安く、工賃(給与)が低い事業所が多い中、ここでは安定的な仕事で高収入が得られ、楽しみながら仕事をしてもらいます。この取り組みは、地域の障がい者が地域で暮らせることにもつながります。ここでも基本理念が生かされています。
地域との結びつきで、今後ますます地域から必要とされ広がっていく豊珠会に注目が集まります。
(事務局 牧本)
♦会社概要…事業内容:介護老人福祉施設・通所介護・居宅介護支援・認知症対応型等 所在地:柏市篠籠田1390 従業員数:295名(内パート・アルバイト120名) 入会年:2020年 HP:https://www.houjukai.or.jp/