【企業訪問記withコロナ】会社の労務問題を治療する鍼灸師を目指して

遊心堂 代表 鈴木 唯史氏(市川浦安支部)

 鈴木氏は鍼灸師の学校を卒業後、整形外科や接骨院への就職はせずに出身の栃木県で鍼灸院を開業します。ある時治療が終わったお客様から手紙をもらい、そこには病気で休職をしていたが、治療の結果また社会復帰できるようになったという感謝が綴られていました。自身の仕事が単なる病気の治療に留まらず、もっと大きな意味が持てるのではないかと考えて東京で鍼灸院を開き、それと並行して貧困問題や福祉問題に取り組むNPO活動にも積極的に参加しました。

 結婚後、拠点を松戸に移して地元のNPOとも関わりながら鍼灸院を続けます。しかし鍼灸院は整形外科や接骨院とは異なって保険適用のハードルが高く、前者は1回数千円、後者は数百円と価格に大きな開きがあり、体の痛みで最初に掛かる選択肢として選ばれにくいという業界構造があります。結果、集客が思うようにいかず訪問主体のスタイルに切り替えました。

 そんな折、街を歩いていると病院には人が溢れかえっていることと、自身が学ぶチェーンストア理論の中の「魚のいないところに魚を呼び込むよりも、魚のいる方に移動した方がいい」というフレーズが結びつき、医療機関と組んで何か出来ることはないかと考えます。これまでの鍼灸の治療を通じて、自身の他にはない強みは鍼灸治療だけでなくメンタルケアも得意だったことから、都内の心療内科クリニックに飛び込んで話をしてみたところ、院長の同意が得られてクリニック内でメンタル鍼灸外来を開設。現在はそこでビジネスマンのメンタルケアに当たっています。そこで目の当たりにした現実としてビジネスマンが心のバランスを崩す圧倒的理由が「過労」で、いくら通院で治療をしても会社に復帰してまた過労をすればまた通院生活に逆戻り。個人の病気だけでなく、会社の労務問題を治療しなければ解決しないのです。

 「治すという行為の中で最も程度が低いことが病気を治すこと、その対極にあるものが社会を治すという行為です」そう話す鈴木氏は今後の展望として、そもそも従業員が心の病気に陥らないような労務管理や業務整理の支援を行う外部サポーターを担っていけたら、とも話されていました。事業内容を一読しただけでは捉えきれなかった、鈴木氏の事業にかける情熱を知ることのできた取材となりました。

(事務局 田中)

♦会社概要…所在地:松戸市稔台3-46-18 事業内容:ビジネスとして地域や社会の課題解決に取り組むこと

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