【企業訪問記withコロナ】「仮説力」で先を読む!~コロナ禍に打つ大きな一手~
(株)まるい 代表取締役 鈴木 大輔氏( 安房支部)
コロナ禍で苦境に立たされている飲食店の影で、そこに食材を卸している会社もまた大きなダメージを受けています。
館山市で魚の卸売・小売を営む「 まるい鮮魚店 」 もそのひとつ。 全体の約6割を占めていた飲食店からの受注が激減し、前年対比で3割近くの売上減が続いています。2019年には千葉県に上陸した台風15号による一週間の停電で、大きな損害を被ったばかり。二重の苦難が同社を襲っています。
しかし、この危機に対し鈴木社長の経営判断は迅速かつ大胆です。
まず飲食店からの受注が減少した分、市場やスーパーマーケットへの売上を全体の7割にまで拡大させ、リカバリーをはかりました。また、普段から1社依存せず売上比率を分散させてきたことが、打撃を抑える要因になったことから、今回の一番の教訓を「仮説力の大切さ」と話します。すでに外部環境を見据えて様々な計画が進行中です。
その最も大きな計画が工場の建設です。新工場では鮮魚を様々な製品に加工するラインを導入し、製販一体型を目指します。これは魚の付加価値を高めるだけでなく、食品衛生の観点から時流にも即しています。近年、地球温暖化の影響で海洋生物に細菌が寄生しやすくなっており 、丸ごと魚を販売するよりも、衛生的に加工処理をすることが求められているのです。将来的には館山の魚を安心安全に海外へ輸出したいと鈴木社長は考えています。
工場の建設は「事業再構築補助金」やHACCP(食品製造現場の衛生管理手法)関係の助成金も使う予定ですが、当然金融機関からの多額の借入も伴います。コロナ禍の逆風でも、金融機関が積極的に融資する背景には「事業の将来性」と「明確な事業承継の道筋」があることが明らかです 。鈴木氏は現在48歳ですが、すでに同じ業界で修行中の息子さんが継ぐことが決まっています。「『大変だからやめた方が良い』って3回、言ったんですけどね(笑)」と語る鈴木社長自身が、一流の飲食店に売り込みをかけ、 家族経営だった小さな鮮魚店を販路拡大で大きくしてきた開拓者 。
「館山の魚って本当に美味しいんです。それを広めたいのと、漁業に関わる次の世代がいるから 借金してまで頑張ろうと思える」。前向きな言葉に、コロナ禍に力強く立ち向かう企業家魂を感じました。
(事務局 菊池)
♦会社概要…所在地:館山市船形1084 資本金:1,000 万円 従業員数:22 名 事業内容:水産物の卸売、小売業、飲食業