次世代を育てる地域づくり~働き方を変える業界インフラ~
昭和運送興業(株) 取締役 安田 憲史氏(安房支部)
今回は、館山で運送業をしている安田氏にお話を伺いました。元々、地域で多くの雇用を支える船のエンジンの製造工場があり、その運送を担っていた同社。しかし工場の倒産で、牛乳や飼料といった酪農関係の運搬にシフトすることになります。酪農業界は競争が激しく、その煽りも大きかったとのこと。そんな中、乳牛の給餌は餌の扱いが難しく、健康管理にとても手間が掛かかることを感じ、その解決のためにTMR(栄養バランス抜群の完全混合飼料)の製造センターを作る。扱いやすい飼料の生産と運送を一括することで、必用な時に新鮮な飼料を届けることで差別化に成功。酪農家の負担を軽減できたことから、離農の食い止めを意識するようになります。
酪農業界は後継者不足から離農が進んでいる現状です。その要因として、年中無休なうえに、ある程度の規模がないと生計も立てられないことがあり、子供に継がせようと思えず、やりたい人が居ても簡単には始められないことがあります。しかし、そういった課題は業界に、安心して学べる環境や休みを取れる仕組みが無いからだと安田氏は語りました。耕作地から給餌の管理、成牛の確保や排泄物の処理など、個々では難しくても共同でやることで負担を大きく軽減できます。そうした業界インフラを整えることで酪農という仕事の在り方を変えられると考え、現在では、給餌の軽減のTMRセンター、コントラクター(農作業委託)事業による土地管理や成牛を育成する牧場の一括管理を担っており、酪農家の課題を解決しながら新事業を広げると共に、離農率を下げています。
今後は更なる業界インフラの拡充を目指して、畜産農家の共同会社を構想中とのこと。大型牧場の建造や先進的な投資を共同で行うことで、地域の大きなインフラとし、畜産農家の生産性の向上と労働環境の改善を目指しています。そして何より大きなインフラがあることで、若い人が来たときに畜産業を始められる環境を提供することができ、就農支援とそのフォローアップ体制が築ける。そうした次世代を育てられるような地域づくりを、業界をあげて進めていきたいと展望を語られました。
(事務局 道山)
◆会社概要…所在地:館山市湊493 資本金:4,500万円 従業員数:72名(うちパート・アルバイト4名) 事業内容:トラック・バス運送事業及び農業生産法人