【輝く中小企業の取り組み】Sghrの「ものづくり」が紡ぐ「ものがたり」~地域を越え、いつまでも愛される企業であるために~
菅原工芸硝子(株) 代表取締役社長 菅原 裕輔氏(つくも支部)
千葉県東部に位置する九十九里町には、伝統工芸品であるガラス工芸を扱う企業があります。取材先へ向かう道中、至るところで菅原工芸硝子(株)の看板が目に留まります。看板に導かれて通りを曲がると、大きな工房と自動車教習所、そして平日からにぎわうカフェがありました。創業92年の同社はガラス工芸の製造販売と、ガラスの製作体験、実際の商品を使用したカフェ、そして九十九里自動車教習所の運営など数々の事業を担う会社です。今回は三代目の菅原社長を取材しました。
Sghrのものづくり
同社でのガラス工芸のはじまりは、東京都の江東区にあります。江東区・墨田区などの地域はガラス生産が盛んな地域で、前身の会社も工場を置いていましたが、土地の狭さからより良い環境でものづくりが出来る地域を探して九十九里町に行き着いたといいます。
Sghrの商品の特長として、職人自らが開発とデザインも担っています。技術や技法を習得するだけでなく、ものを生み出す活動も含めて魅了された方々が「ここで働きたい」と全国から集まっています。
ものづくりにおいて最も大切にしていることを伺いました。それは、「我々作り手が、いかに楽しみながら夢に向かって進んでいけるか。またそういった環境をつくることが出来ているか」だといいます。ガラスづくりは技術習得に長い年月を要します。また、一年中高温の工房の中で、職人たちは精神と身体を研ぎ澄まし続けており、決してラクな仕事ではありません。それでも「ものづくりがしたい」という想いを持った方が集まるので、「彼ら彼女らが楽しみながら頑張れるよう背中を押したい。また、職人だけでなく他の部門の人たちにも、ものづくりの一員としてやりがいを感じながらお客様に商品を届けられる職場にしたい」と話します。
社員との想いの共有
代々引き継がれてきた社長の想いや企業理念は、毎月の朝礼や動画などで共有しており、また社内のコミュニケーションツールにLINE WORKSを活用するなど、社員との意思疎通を図る機会は多いようです。そこに至るまでには苦悩もありました。ある日、社内調査を行ったところ、社長が良かれと思って実行したことに対し、社員からは思いのほか否定的な声が多かったといいます。それは個々の考え方の違いや気持ちの乖離からくるものでした。そこで、一方的に発信するだけでなく、社長自らが現場を見て、社員の声を聞くことで、お互いが気持ち良く働けるようになったと言います。だからこそ日常的な対話や社員の声に耳を傾け、自分事として捉えることを経営者はするべきだと気付きました。使い手の暮らしが彩り、楽しさや笑顔が増えるためには、まずは我々作り手がいきいきと働ける環境を作っていかないと、お客様にまで想いが伝わらず、商品の価値にも影響するというお話に胸を打たれました。
地域を越え、いつまでも愛される企業であるために
今後どうやって社員らが物心ともに幸せになれるかを考える中で、まだまだやらなければならないことがあると菅原社長は話します。同社では、「日本一幸せなものづくりの現場の実現」を掲げていて、これを実現するためには、賃上げの課題がネックだと言います。これは人件費の比率が60%を超える事業であるため、大変ですが絶対にクリアしたいことだと言います。そのためにも全従業員がものづくりを楽しいと思える原動力や、頑張りたいと思える環境を育んでいきたいと話します。そして結果として、国内外を問わず自社の製品やサービスが評価をいただき、多くの方々に足を運んでもらえる場所でありたいと語りました。ものづくりを通して、社長と社員の夢と想いが紡ぐ「ものがたり」はこれからも続きます。
(事務局 眞山)
♦会社概要…事業内容:職人によるハンドメイドのガラス器の製造及び販売、自動車教習所、カフェ運営 所在地:山武郡九十九里町藤下797 資本金:2,300万円 従業員数:190名 入会年:2017年