【輝く中小企業の取り組み】金属加工の新たなモノづくり~町工場の二代目社長の挑戦

(有)双葉テックス 代表取締役 江上 健治氏(浦安支部)

江上 健治氏

 船橋市栄町の準工業団地の一画に工場を構える双葉テックス。耐熱性に優れた金属加工品を製造しており、製鉄溶鉱炉や焼却炉、石油化学製品の生産設備などに使われています。耐熱性や耐腐食性のあるステンレスを主とした加工品を製造しています。また、ヘックスメッシュという強度のある織金網を製造しており、これは国内でも数社しか扱っておらず、同社の強みの1つです。

ヘックスメッシュ
工場内

 取材に応じる江上社長の指には、金属製の六角ナット(ネジを固定する金具)がはめられ、傍らには、筋トレができそうな重さの金属製の四角いバックがありました。それらは営業の際に、お客との話題づくりに役立っているとのこと。江上社長のユニークな人柄が伺えました

金属製のバック

 同社は、奥様の父親が1983年に立ち上げました。江上社長は、デザイン関係の会社に勤めた後、転職先の国際物流会社で奥様と出会い、2012年に同社に入社しました。2021年には社長に就任し、双葉金属工業から現在の社名に変更しました。

新たなモノづくりへの挑戦

 同社でつくられる金属加工品は、人々が生活していくためには欠かすことができない場所で使われているため、誇りのある仕事だと江上社長は胸を張ります。しかし国内では新しい工場があまり建設されないので、仕事量は横ばいの状況です。今から手を打っていく必要性を感じ、新たなモノづくりに挑戦し始めました。

 その1つがヘックスメッシュの転用です。金具をつなぎ合わせてつくる六角形の織金網は強度が高く、元々は戦時中に米軍が飛行機の滑走路補強のために開発されました。現在は、石油を攪拌(かくはん)するタンクの壁面に使われています。六角形の集合体はハニカム構造と呼ばれ、自然界ではハチの巣でよく見られます。その強度を生かして建築や道路や宇宙開発への転用や、六角形の幾何学模様を生かしたモノづくりを模索しています。

ヘックスメッシュの入れ物

 もう1つが、製造過程で出る端材を活用したモノづくりです。ステンレス板などから必要な部分を切り取ったあとの残りは通常は処分しますが、それらを活用して包丁やスマートフォンの音を拡張するスピーカーをつくりました。SDGsと職人の技術向上を意識した取り組みでしたが、思うようには売れませんでした。

グリルプレート

 そこから転じて、カセットコンロ用のステンレスのグリルプレートをつくりました。ステンレスは伝熱と蓄熱に優れた金属であることから、弱めの火(ガス)で食材をより美味しく焼けるとのこと。また、錆びにくいので手入れが簡単であることも利点です。ステンレスの純度(含有率)によって質が左右しますが、同社では元々、純度が高いものを扱っていたことで質の高い製品に仕上がり、キャンプ需要の高まりとともに注文が増えています。これは江上社長自身のキャンプ好きも講じて、消費者目線から生み出されました。

コラボでの薪ストーブづくり

薪ストーブ

 こうした新たなモノづくりへの挑戦をSNSやメディアなどを通じて発信していたところ、県内の薪ストーブ販売店からコラボレーションの依頼があり、金属製の薪ストーブを開発中です。国内市場では、北米から輸入された販売価格が1台50万から100万円のものが多く、もっと手頃な価格で普及させ、災害時にも使えるようにしたいとの想いと、2025年4月施行予定の「省エネ基準の適合義務化」で薪ストーブに注目が集まるのではないかとの予測のもと、協同開発に至りました。

社屋

 最後に抱負として「これら製品開発や探求の根っ子には、会社は社会に役立つ存在、人の幸せを追求していく存在という想いがあります。そんな想いを社員とも共有してこれからも挑戦していきたいです」と話されました。

 今回の取材をとおして、入会して間もない江上社長ですが、今後、同友会で想いを共有できる会員経営者を見つけ、協同での取り組みを広げていかれることに期待が膨らみました。

(事務局 牧本)

♦会社概要…事業内容:プラント・工業炉の炉材金具を製造する金属加工メーカー 所在地:船橋市栄町2-8-11 資本金:6,000万円 従業員数:3名 入会年:2023年

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