【新型コロナ関連情報 No.24】千葉大学大学院社会科学研究院 小川真実教授からのメッセージ

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千葉大学大学院社会科学研究院
小川真実教授からのメッセージ
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なかなか先の見えない状況が続きますが、同友会大学でもご講演いただいている千葉大学の小川真実教授より、現状から今後の情勢までの鋭い分析と、今後どう向き合っていくべきかを提言したメッセージをいただきましたのでお送りします。

◆小川真実氏プロフィール
2003年4月より千葉大学法経学部講師に着任。助教授を経て、2018年4月に千葉大学キャリアセンター長を歴任。2020年より教授に就任。〔専攻分野〕会計学・ファイナンス(財務管理・企業財務)


以下全文
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千葉同友会会員の皆さまへ

『中小企業へのメッセージ』

 新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中に感染者や死亡者が爆発的に増えている。日本でも多くの人々が感染し、命が失われていったのは、周知のとおりである。現在、それ以上に深刻なっているのが、経済への大打撃であろう。医療従事者の献身的な努力や不自由な生活に耐えている多くの人々に敬意を表したい。政策当局者も、金融機関などと一丸となって経済の再建に取り組んでいるものの、後手に回る対応にならざるを得ないのは否めず、経済再建に向けた迅速な対応を期待したい。

■今後、地域の中小企業に考えられる影響
 さて、現在も続く、新型コロナウイルスの猛威は留まるところを知らないが、感染防止のための外出自粛や企業活動の自粛が、経済に暗い影を落としている。第1波では、飲食や芸能関係、観光や宿泊など中堅・中小のサービス業に壊滅的な打撃を与え、次にグローバルで事業を展開する大企業にも襲い掛かっている。
 緊急事態宣言が解除になり、移動の制限も解除され、人々の移動が回復しつつある。とはいえ、「新しい生活様式」による感染拡大の防止が人々の行動に影響を与えている。営業時間の短縮は継続し、人々の消費活動は委縮している状態にある。新しい生活様式のもとで、通信販売や食品のテイクアウトなどの消費は飛躍的に伸びているが、国全体では消費が委縮し、商品供給を行うものづくりの生産現場は減産せざるを得ない状態にあることは間違いないだろう。
 いずれにしても、日本経済や地域経済への影響は大きく、ワクチンをもたない以上、感染の第2波の影響に備えた行動が必要になることだろう。また千葉県では昨年秋の台風による大きな被害を受け、再建の途上にあるなかで、苦しい状況が続くことになるのは予測される。
千葉同友会が実施した新型コロナウイルスの影響に関するアンケートを見ると、ほとんどの会員企業は減収の見通しであり、従業員の勤務調整や商談の遅延に頭を悩ませている姿が浮かび上がってくる。なかには、悲痛な訴えを上げる経営者も少なくない。いずれにせよ、社員や訪問客にウイルス感染者が出てしまうと、風評被害も相まって致命的になってしまうので、どの企業も慎重な対応を堅守するのは当然のことだろう。

■中小企業が考えるべき視点
 こうした状況のもとで、感染拡大の防止に努めることが最重要課題であることは言うまでもない。現実には、中小企業がまず取り組むことは資金繰りの確保に尽きる。現在、余裕のある企業であっても、付き合いのある金融機関との連絡を密にしておくべきだろう。そのためにも、経営管理目的で活用している月次決算情報の把握など、経営の実情を理解しておくべきと思われる。支援を求めることは恥ずかしいことではない。経営の実態を的確に把握し、それを説明する勇気を持ち合わせたいことだ。
 また、新型コロナの影響を受けて、オンライン会議システムが積極的に導入されつつある。いまや情報通信技術を取り入れない中小企業は少ないと思われるが、多少厄介でもこの分野には力を入れていくべきであろう。メールマガジンの配信によって顧客との関係を維持し、ホームページの更新によって新製品のPRを進め、オンライン会議システムの活用により新卒採用など、やるべきことは多々ある。情報通信技術に長けた若手に教えを乞うかたちで、従業員同士のコミュニケーションを図っていく格好の機会ともいえるだろう。

■千葉同友会への役割期待
 振り返ってみると、人類は未知なる感染症の猛威や経済不況にさらされ、それらを乗り越えてきた。わが国でも江戸時代の度重なる大飢饉や大正時代のスペイン風邪、平成バブル不況やリーマンショック、直近では東日本大震災など、挙げればきりがない。
 もちろん、人類は日々進化しているので、歴史は繰り返すわけではない。とはいえ、歴史から学ぶべき姿勢は大事であろう。日本では多くの偉人を輩出し、こんにちでは長寿企業が世界に類を見ないほど存在する。また激動の昭和に起業し、令和に至るまで存続し続けている県内企業も少なからずいる。先人の経験から教訓を学び、こんにちの経営に活かすべきではないか。
 幸いにも、千葉同友会をはじめ、中小企業家同友会には多くの会員企業が名前を連ねている。例えば事例報告など、同志の知恵を借りつつ、自社の経営の発展につながる学びの場を積極的に活用されてはどうだろうか。とくに、中小企業が生き残るには、固有の強みや「らしさ」、すなわちイノベーションに活路を見出すしかないだろう。ビジネスモデルのあり方も含めて、学び続けることが大事だ。

2020年7月1日
千葉大学大学院社会科学研究院・教授 小川真実
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