【会員企業の取り組み事例withコロナ】顧客の創造から働き手の創造へ

ビィー・トランセホールディングス(株) 代表取締役 吉田 平氏(八千代支部)

吉田 平氏

地域住民の声に合わせて事業を展開

 千葉市を中心に、人々の移動をバス・タクシーで支援する会社、ビィー・トランセホールディングス(株)は昭和40年に創業します。以来、地域住民の困りごとを解決するための乗り合いタクシー事業や路線バス事業といった、ニーズから出発した新規事業に取り組み続けてきました。また自社でバス停を持っているという強みを生かして、千葉県が擁する世界とつながる国際空港・成田と東京駅をつなぐ「THEアクセス成田(※)」という高速バスの運行でメディアからも注目を集めています。

前年比売上95%減の中、誰一人解雇しない

 そんな中、旅客業界に大きな影を落とした、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令。旅行需要だけでなく、リモートワーク/授業で日々の移動もなくなって路線バスも利用されず、一時は前年比売上が95%減まで落ち込みました。しかしその中でも同社は「誰一人解雇しない」という方針を貫きます。既存事業が落ち込んだ分、安全に社員を出社させたいという企業ニーズを拾い上げて企業送迎バスや、アフターコロナを見据えてマーケティング部を立ち上げ、バス運行のみにとどまらない独自のバスツアー企画などに取り組みました。それらの新たな取り組みも功を奏し、激減した需要も回復しつつある中で、また向き合わなくてはいけないのが、長年の課題であった乗務員の不足です。

全国事例をヒントに働き手の創造に挑戦

 全国的にバスの減便・廃線が加速しています。これまでは地方の過疎化などによる利用者の減少が主な理由だったのですが、近年はこれに加えて乗務員の減少・高齢化が大きな要因となっています。同社はこの課題に対して、これまでニーズを拾い上げて「顧客を創造」してきた経験から、これまで乗務員を検討していなかった層に働きかける「働き手の創造」に挑戦しています。

 群馬県草津町の温泉旅館で、お客様のチェックアウト直後の一番忙しい時間帯だけプロサッカーチームの選手に働いてもらい、サッカーのみで生活することが難しい選手層の生活安定を図っているという協業事例からヒントを得ます。同社でも決められた時間だけ乗務員として勤務し、その前後の時間はスポーツや芸術活動に打ち込んでもらうという形態での正社員雇用の募集を開始しました。卒業後もスポーツや芸術活動を続けたいが、それだけで生活を安定させることが難しいがためにその道を諦めてしまう人を応援できる仕組みです。もしスポーツ・芸術との両立から、ライフステージが変わって生活基盤の安定が必要になった際は、そのままフルタイム正社員に移行することも歓迎しています。

 吉田氏は「草津町の他にも仙台市では産・官・学の連携で、学校の部活指導員を行政の仲介によって有償で地域に発注し、民間企業はそれに合わせた時短勤務正社員制度を整備。それによって朝から15時くらいまでは民間企業で働き、それ以降は部活の指導員として働くという自分の好きなことを続けられるライフスタイルが提供されています。私たちと同じような考えを持った企業が増えてくれて、千葉市で同じようなことが出来たら」と話されました。規制産業の中でも業界初の挑戦を続け、幾度もの難局を「創造」で乗り越えてきたビー・トランセホールディングス(株)の新たな挑戦の幕開けを伺うことが出来ました。

(事務局 田中)

(※)現「エアポートバス東京・成田」(2020年よりビィー・トランセグループ、JRバス関東、京成グループの共同運行)

♦会社概要…事業内容:旅客事業全般統括会社 所在地:千葉市美浜区中瀬1-3 幕張テクノガーデンD棟10階 資本金:7,500万円 従業員数:グループ計334名(うちパート・アルバイト20名) 入会年:2007年

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