【会員企業の取り組み事例withコロナ】逃げずに向き合えば、道は開かれる~安全・安心の運送会社を目指す~
(株)内房運送 代表取締役 杉本 一樹氏(四街道支部)
(株)内房運送は千葉市稲毛区を拠点に、日本全国への配送を請け負っています。主要運搬物は資材、部材、鉄骨、建築物等で、注文が入ったらスピーディに届けることをモットーにしています。配送の要なる平ボディトラック(荷台部分が平らになっているトラック)も大型車6台、4t車7台、その他に7tユニック車1台を保有し、様々な依頼に対して柔軟に対応しています。
お米の配送から始まった(株)内房運送
内房運送の創業は昭和46年、同氏の父の知人が内房エリアを中心とした米の配送業でスタートしました。そして昭和59年に同氏の父が「会社名はそのまま残してほしい」との思いと共に知人から事業を引き継ぎました。そして建設業に精通していたことから、建設資材の配送へと事業をシフトしていきます。
3代目となる同氏は22才で会社に入社し、しばらく経理や税務処理を担当します。当時は経理の知識も全く無く、一から自分で調べ、試行錯誤しながら知識を身に着けました。「経理関係業務はとても大変でしたが、冷静な目で会社を見ることができました。それは社長になった今でも活きています」と話します。
真に従業員の生活を保障すること
様々な困難を乗り越え、平成25年に同氏は先代から事業承継しました。まず同氏が行ったのは給与形態を歩合制から時給制への変更です。時給制にすることで安定的な賃金保証を試みましたが、職人気質の社員から激しい反発がありました。それに対し、安定的な賃金を保証した上で、給与を上げていくことを約束したところ、誰も辞めませんでした。真摯に社員と向き合う姿勢が伝わった結果、高い定着率を誇り、現在でも人材不足に陥っていないと言います。
同社はコロナ禍による赤字で苦しむ中でも賃金保証をしました。同業他社ではリストラや給与カットを行うところもありましたが、同氏は「この困難な状況を脱却するには業界の常識から外れたことも自分が苦しんででもしなければならない」と思っていました。
対等なパートナーとしての運送会社を目指す
中小企業等が価格転嫁しやすい環境の実現のため下請法の改正も行われていますが、運送業界は未だ親事業者が優位に立っていることも多く、運送会社はただ荷物を運んでいるだけと思われる節があります。「低価格であることが差別化だと捉えられ、1社だけ値上げを願い出ても、爪弾きにされてしまいます。私は消費者まできちんと届けるところまでが”モノを売ること”であり、その点では運送会社は必要不可欠な対等のパートナーであると思います。注文が入っても届かないと意味がないと業界全体で理解してもらいたいと思っています。」
価格競争とコロナ禍による仕事量の減少に悩んでいたところで同友会に出会いました。そこで様々な経営者の困難な状況下でも失敗を語り、そこから学び、未来を前向きに語る姿に勇気づけられたと言います。人脈も広がる中、何のために経営しているのかを明文化するため、30期経営指針成文化セミナー受講を決意しました。
真面目に生きていると良いことがある
逆境にから逃げずに、他者に真摯に向き合う杉本氏。その根本にはある考えがあります。「これまでに真面目に生きていたことで九死に一生を得たことあります。その経験から自暴自棄になりそうな時も逃げずに堅実に向き合う姿勢ができました。一つずつ対処していくしか解決策も生まれないと思いますので、これからも積み重ねていきたいと思います。」
2024年問題(※)を危惧した大手企業による運送会社の囲い込みが始まり、運送会社の争奪戦が起こると予想されています。その中で同氏が目指すのは、社員も自身も安定・安心して働ける場をつくり、守ることです。その思いが形となるよう、経営指針成文化セミナーでも大いに期待したいと思います。
(事務局 関根)
※2024年4月1日以降、トラックドライバーの時間外労働の上限規制により発生するドライバー不足や運賃向上等の諸問題
♦会社概要…事業内容:運送業 所在地:千葉市稲毛区小深町28-1 資本金:1,000万円 従業員数:16名 入会年:2021年