【会員企業の取り組み事例withコロナ】快適で住みたいと思える古民家づくり~最先端技術を取り入れ伝統を守る
大五郎建設(有) 専務取締役 石井 良次氏(安房支部)
古民家を有効活用!ではなく古民家だからこそ良い家が作れる。そう話す古民家におけるエキスパートの石井良次氏にお話を伺いました。同社は元禄5年(1692年)に創業し約300年以上続く企業です。代々引き継いできた伝統技術を生かして古民家の再生事業や伝統製法による家づくりを手掛けています。千葉の全国古民家再生協会の役員も務め技術の普及や業界の環境改善に貢献しています。
伝統と現代の乖離
古民家再生協会(以後「協会」)の定義では、古民家とは昭和25年の建築基準法の制定時に既に建てられていた「伝統的建造物の住宅」としており、現代の建築製法と大きく異なります。そのため、現在の建築基準に合わないものも多くあります。たとえば耐震性の確保に金具の付け方や数が大きく関わっており、本来金具を使わなくても確保できる耐震性が現行の基準では達成できない場合があります。協会の働きもあり法律の改善も進められていますが、同社では金物の質や木の組み方を工夫することで少なくても高い耐久性を確保できる工夫をしているとのこと。伝統製法と現代の現実の乖離は古民家によって大きな障害になっています。
最先端技術を使った快適な古民家づくり
古民家は寒い暑いは当たり前とよく言われます。しかし同社ではSDGsの観点からも改善できないかと考えました。古民家の風情は守りつつ気密性を高めた設計にするとともに、NASAの宇宙開発技術から生まれた高断熱材を使って熱のロスを大きく減らす。更に断熱材によって起こる熱の溜め込みやカビの発生を防ぐために、壁の設計を工夫し、空気が家中に回るようにして、高気密でありながら遮断、遮熱効果の高く、健康的で快適な家づくりに成功しました。もともと現代表の父親が新しい技術を取り入れるのに積極的であり、それを石井氏が事業に落とし込んでいるとのこと。そうした新技術の導入や設計の改善により、一般住宅より寧ろ快適な古民家を建てて価値の高い家づくりをしています。ただし、伝統技術だけでなく新しい技術も次々に取り入れているため、従業員への教育や外部との協力には苦慮していると話します。
古材はとても丈夫な木材
古材は一般木材よりも耐久性が高くなるそうです。切られた新品の木材の耐久が一番低く200年程度まで耐久性は上がり続け、そこから1000年ほど掛けてゆっくり減衰します。そのため、50年以上経過している古民家は状態が良ければ使われている木材はとても良質なものになるということです。古民家を解体して出た木材で新築を建てることもあり、そうした古材の良さを知ってもらうため、同社では古材のショールームの開店も予定しているそうです。
古民家の伝統を大切にしながらも常識を覆し、新しいものを取り入れて業界を成長させている石井氏。今まで引き継いできた伝統技術を次代にも継承するとともに、古材を通して地域に貢献していきたいと熱く語っていただきました。
(事務局 道山)
会社概要…事業内容:一般建築業 所在地:南房総市千倉町白子1672 資本金:300万円 従業員:15名 入会年:2019年