【会員企業の取り組み事例withコロナ】地元の人々の節目を見守り半世紀~日本伝統文化の伝道師~
(有)翁 役員 加瀬間 昌子氏(東総支部)
成田国際空港と成田山新勝寺の近くにある日本料理店「翁(おきな)」は、旬の食材を使った色鮮やかな料理が目を引き、趣ある庭と池を眺めることができる離れの個室や120名まで収容できる個室を揃えています。お食い初め、七五三、接待、大宴会などに使われ、50年以上地元の人々の節目を見守りながら歩んできました。
翁の創業は1971年。先代の義父が寿司屋として開業し、その後に成田国際空港の開港頃に今の場所に移転し、日本料理店として始めました。現在は、加瀬間氏が女将として接客を切り盛りし、夫は板長として腕を振るっています。
先代は「お客の為になることをする」という考えを徹底して形にしてきました。昔は祝い事や法事などは個人宅で行うことが多かったため、料理の提供に留まらず座布団などの備品を貸し出すなどして、地元の方から重宝されてきました。
祝い事に使われることが多い翁は、日本の伝統文化を大事にしたいとの想いから、ひな人形や兜人形を飾るなどして喜ばれています。「最近は住宅事情もあり、ひな人形は二体だけの家庭もあります。全てのひな人形が揃ったところを見せ、日本文化を知ってもらいたい」と加瀬間氏は言います。
コロナ禍で得たもの
2020年から始まった新型コロナの影響はやはり大きく、少しずつお客が戻ってきてはいますが、ここ2年間は本当に苦しかったと話します。ありとあらゆる行事が中止、営業時間の短縮、政府の要請で止む無く1ヶ月間休業等々。長く働いている地元の社員を守るために雇用調整助成金などの助成金や補助金を活用しやり繰りしてきました。
ただ、そういった中でプラスになったこともあり、コロナ感染対策に一早くきちんと取り組んだことで、お客からの信頼と評価につながったと言います。一般的な感染防止対策の他に、予約客数(団体数)の受け入れを少なくして、コース料理の最低金額を3000円から4000円にしました。そのことでスタッフが一人ひとりのお客に向き合える時間が増え、サービスの向上につながりました。それを示すように大手検索サイトでの評価がコロナ禍前と比べて高くなりました。
また宅配を外部に委託し天重や鰻重などの宅配を始めたところ、個人客からの注文が増え、新たな客層を得ることにつながりました。ネット販売にも取り組みましたが片手間ではできないことを実感し今は行っていませんが、「とにかくやれることはやる」の開拓精神で挑戦する大切さを実感したと言います。
これからの翁が進む道
コロナ禍をとおして、これからの翁を考える時間が増えた加瀬間氏。自社の経営指針をつくり将来展望をもって経営をしていきたいという想いが強くなり、昨年、同友会の経営指針成文化セミナーを受講しました。セミナーで見えてきたことは、日本の伝統文化をもっと押し出した店づくりを進め、成田という地の利を生かして海外の方にも日本を知ってもらいたい、という想いでした。また、コロナ禍で思い返した「一人ひとりのお客に寄り添った店づくり」を進めるために、予約制の店づくりを進めることでした。
まだまだコロナ禍の余波は続き大変な状況ではありますが、これから経営指針に示した店づくりを目指して、社員とともに一歩二歩と前に進め、コロナ禍を乗り越えていかれる姿が目に浮かびました。
(事務局 牧本)
◆会社概要…事業内容:会席料理、日本料理、完全個室宴会 所在地:成田市美郷台3-1-14 資本金:500万円 従業員:15名(内パート・アルバイト10名) 入会年:2022年