【会員企業の取り組み事例withコロナ】 人と人とのかかわりの中で、磨かれ、成長し続ける企業
(株)セキネ 代表取締役 関根洋一氏(美浜支部)
変わらない、地域社会に貢献する姿勢で一世紀
(株)セキネは千葉市中央区で大正13年から続く文房具や事務用品の販売店で、現在はオフィス環境にかかわる様々なサポートも行っています。同社を訪問すると誰もがまず珍しい内装に目が奪われ、曲線の織り成す温かみのある空間に、不思議な安らぎを感じるに違いありません。
もともと関根社長の祖父がパイロット万年筆の代理店として創業しました。その後、創業者急逝に伴い20歳で二代目社長義昭氏が事業を継承し、文具、事務機、オフィス家具商社として地元での信頼を築いてきました。
1998年には、いち早くオフィス向け通販「アスクル」の販売代理店を開始。この決断が、外資系企業の参入で価格破壊が進みつつあった業界を守り、かつ顧客に貢献できる形で、同社がその力を発揮できる道を築きました。「アスクル」は小規模企業でもオフィス用品を気軽に購入できる点が支持されていますが、安くて便利なだけでなく同社のような地元企業が代理店となることできめ細かいサポートを可能にしています。(株)セキネは変化する時代の中で、このように形を変えながらも一貫して地域密着型の経営を貫いてきました。
経営姿勢が変わったきっかけ
関根社長は大学卒業後、千葉銀行に10年間勤務したのち1995年に同社に常務として入社しました。銀行で厳しい営業経験を積んだ関根氏は、「当たり前の事を当たり前にやる」ことを信条とし、増収増益、経常利益は7倍に跳ね上がりました。しかし、早朝から深夜まで、「営業会議」と銘打って、社員を厳しく追及することも多々あり、業績が伸びるのとは裏腹に社員との関係はぎくしゃくしていました。
そして家庭でも同じようなことが起こります。大学までを野球一筋だった関根氏は、同じく野球部に所属していた息子さんに対し、自分の経験を押しつけ、疲れて帰った息子さんに深夜まで自宅練習を強要していました。良かれと思ってしたことが、かえって息子さんとの距離を生んでいました。
そんな時、ある勉強会で心のあり方を学びます。それまでの自分は、社員や息子さんを全く信用せず、強引に自分の価値観を押し付けていたことに気づき、心の底から反省したそうです。すると、社員や息子さんとの関係は、びっくりするほど短時間に改善していったとおっしゃっていました。「経営の知識や小手先のテクニックを沢山学んできましたが、その使い方を間違え、気がつくと社員を斬る武器として使っていました。人は、純情(すなお)になることで、全てがうまくいくんですよ。松下幸之助さんも『素直』という言葉を最も大切にされてました。純情(すなお)になることで、良き協力者に恵まれたお陰で今があります。」とおっしゃっていたのが印象的でした。
本当の意味で「寄り添える」サポートを
新型コロナ感染症の影響でデジタル化やペーパーレス化が急速に浸透し、同社主力商品であるオフィス消耗品が必要ない時代へと変わってきました。同社経営理念は「お客様に最高のオフィス環境を提供することで社会に貢献する」ことであり、現在は、業務のデジタル化やクラウド化のサポートをより強化しています。同社の強みは、業務の自動化や、テレワーク、リモート営業、ペーパーレス化を、いち早く自社で行ってきたことです。自社で経験しているからこそ、氾濫する情報に左右されない中小企業の実情に寄り添った支援ができるのです。今後時代がどのように変わっても、その姿勢は変わりません。
まもなく100年を迎える企業の、人と人のかかわりの中で成長し続けるという本質が伝わってくるようでした。
(事務局 菊池)
♦会社概要…事業内容:オフィスデザイン、OA機器販売、アスクル販売店 所在地:千葉市中央区中央4-5-1 資本金:1400万円 従業員数 10名