【会員企業の取り組み事例withコロナ】社員が自発的に動くためには仕組みから~良い会社は自分の仕事を誇れる会社

日本データマテリアル(株) 代表取締役社長 浅見 英知氏(市原支部)

浅見 英知氏

 社内環境の改善活動が評価され、「市原で大切にしたい会社」の大賞も受賞された浅見社長に今回はお話を伺いました。

 もともとは黒電話のダイヤルを制御するバネ材のハンダメッキ加工をしていた会社でしたが、黒電話が世の中から無くなるなかで大きくビジネス転換を迫られることになり、半導体をはじめとする精密なハンダ加工や、金属素材の酸化膜を剥がすフラックスなどを開発する技術産業へと変化していきます。

 浅見氏は3代目にあたりますが、当時は会社を承継する予定はなく証券会社のSEをしていました。ですが、父親の病気を機に会社に戻り、8年かけて代表権を承継します。やはり、いきなり外から来て経営者になるのは難しく、新規事業など引っ張りやすい事業やマーケティングに関わる機会を作ってもらうなど、後から思い返すと承継しやすい環境を作ってもらっていたと話します。

ISO9001,14001を基盤に組織構造の転換~子供に誇れる会社に

 同氏が経営者になり取り組んだ大きなことは社内組織の方針転換でした。工場長であった先代社長の叔父が会社の1~10までを理解していることもあり、現場の細かいことまで全て社長が指示するような依存型のトップダウン。今は良くても今後成長していくためにはこれではいけないと考え、部門リーダーなどを部長に据え、組織を階層化して指揮命令系統を整理していきました。それと同時に昔から会社を知る右腕のような社員と一緒に理念や方針も明文化させていきます。ただ最初の頃は、地域貢献や社会貢献といった考え方が理解されずに苦労したそうです。社内の意識改革で大きく役立ったのがISO9001、14001でした。取引先から求められる形で認証に動いたものでしたが、事業の品質・環境方針だけでなく、社内環境の整備やPDCAの回転などの決め事が多く、それに沿ってやることで社員が自発的に動きやすい指針になっていきました。そうした下地を生かしながら、全体として行動規範と指針の明文化と徹底化をし、社員の意識改革に取り組んでいます。社員の意識が変わるなかで少しずつ課題がボトムアップで上がってくるようになったと話します。

 仕切りにお話しされていたのが、「社員が自分の仕事にやりがいと誇りを持って働いてほしい。それこそ子供に尊敬されるような仕事ができるように」です。そのための社内改革でしたが、その頃に同友会にも入会していて、自分のやっていることが間違ってなかったと確かめられたそうです。

穴あけ抽出されたはんだ
製品チェックのようす
はんだ加工前
様々な形のはんだ
会社外観

提案一件に対して200円の報酬制度

開発実験室

 どんなに規範や方針があっても社員が自発的に考えて動くボトムアップ体制を作るのは難しいです。同社では考える風土を作るために、提案一件に対して200円の報酬を出しています。提案というと難しいですが、困りごとなども一律に提案としており、年間150件を目標に全部署、全社員が出しています。更に課題をそこで終わらせないよう実行部隊を用意し、出された課題に対しては全て何かしらの対応をしているとのこと。課題というのは意外と自然に出てくるものではなく、頑張って考えてようやく出るものです。そうした課題解決の仕組みと取り組みが評価され、「市原で大切にしたい会社」に受賞しました。その流れで健康経営も進み、「健康経営優良法人 2022(中小規模法人部門)」も受賞しています。SDGsに対しても多くの分野で取り組んでいますが、ISOにそもそも環境方針があり、その仕組みもエネルギー資源の効率化や省エネなど、SDGsと親和性が高いです。そうした様々な取り組みで実務上だけでなく外部からも評価されることで、社員が誇りを持てる会社になっています。

 今度の展望としては、電気自動車や太陽光発電パネルなどに使われているパワー半導体などの更に精密なハンダ加工を進め、事業領域を深めていきたいとのこと。社員が自発的に考える仕組みを作ることで社内体制と対応力が良くなり、その結果社員が自分の子供に誇れるような会社となって業績が上がる好循環の事例でした。

(事務局 道山)

♦会社概要…事業内容:はんだ材料の製造およびプレス加工、また電子材料の製造 所在地:市原市姉崎海岸82-1 資本金:2,000万円 従業員数:64名(うちパート・アルバイト・派遣37名)

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