【会員企業の取り組み事例withコロナ】社員が自分の仕事を誇れるような会社を目指して

(株)ユニペン 代表取締役 石井 亮介氏(市原支部)

石井 亮介氏

 今回は房総の中央を走り、その景観の美しさから県より「ちば文化資産」として選定されている小湊鉄道への乗り換え駅「五井」近くで40年以上続く塗料販売・施工会社(株)ユニペンを訪ねました。

会社外観

 元々は塗料商社に勤めていた先代である父が1976年に塗料の卸売業で創業しました。地域に根差した事業展開を続けていましたが、バブル末期に会社が債務超過に。石井氏はそんな会社の状況もあり1999年に勤めていた化学材料メーカーから呼び戻され入社。塗料販売だけでは到底返済が追い付かないと、一人部門で工事業を始めましたが、その頃の塗料業界には「製・販・装を侵さない」という不文律が深く根付いていて、それを破った同社は相当数の取引先から打ち切られてしまいました。2000年代初頭、メーカーは戸建て住宅を売ったきりでフォローしなかったことが問題となり、リフォームブームが起こります。これが追い風となり、工事業を始めて取引が増えた住宅メーカーの営業とお詫び行脚と改修工事を繰り返し、無事完済することができました。

塗料

 しかし一人部門での過労がたたり、病に倒れ営業から離れて経理に移ります。それを聞いた塗料メーカーに勤めていた弟(現専務)が戻ってきて工事部門を引き継いでくれました。石井氏は経理に移って初めて経営数値というものがあると知り、会社の現状を把握するべくこれらを学びました。一方、工事部門を引き継いだ弟は人当たりがよく、職人たちにも慕われていて兄弟二人三脚で再び会社は回り始めました。経理として社内にいる時間が増え、経営数値の改善に取り組みながら、社員の労働環境改善にも取り組みました。当時の業界ではどこも似たような労働環境であったとはいえ、社内には父の決めた理不尽な慣例がありました。もっと社員の労働時間を短くしたい、もっと休みを取ってもらいたいと父とはよく衝突し、その度に味方になってくれたのが弟でした。2014年に代表に就任し、翌年には社内規定を大幅に変更。2019年に健康経営優良法人に認定されるほどになりました。

 父と衝突しながらも 、業界的には平均的である労働環境を変えようとした原動力は何か、と尋ねると「中小企業で社名を言ったところで伝わらない。そういう会社であっても社員が自分の仕事を自信を持って人に話せるような、誇れるような会社にしたかった」と話す石井氏。労働環境の改善だけでなく、業界的にも珍しい工事も行う販売会社だからこそ、お客様がどう使いたいかという用途に対して最適な塗料を提案できるという付加価値が、同社の成長を支えます。塗料の市場は人口減少と比例して縮小傾向にあり、更にはこのコロナ禍で売上の10%を占める取引先を失いました。しかし1社依存体制からの脱却を図りつつ、社員の創意工夫と営業努力で新規開拓や既存ルートの拡販などを進めた結果、売上は落ちていません。働きやすい環境を整えることで、社員が最大限の力を発揮でき、それが会社の成長・発展につながっています。同友会では会員が増えることでその経営体験を持ち寄り、学びの質が高まることを「会員は辞書の1ページ」と表現することがあります。まだ入会間もない石井氏の経営体験が支部の学びを活性化させる、それを予感させる会員訪問取材となりました。

(事務局 田中)

♦会社概要…事業内容:塗料卸売業、住宅リフォーム外壁屋根等塗装工事業 所在地:市原市五井東2-5-5 資本金:1,000万円 従業員数:10名(内パート・アルバイト2名) 

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