【会員企業の取り組み事例withコロナ】とことん企業と留学生に寄り添い、「人財」の架け橋になる~強い決意と信念をもって起業
(株)学び舎 代表取締役 西島 びさる氏(浦安支部)
起業の経緯と決意
外国人留学生の就職支援を行っている同社。西島氏の起業の決意は、突然の訃報からでした。
技術先進国である日本に夢を抱き2009年に留学生としてネパールから日本に来た西島氏。2013年、日本語学校と専門学校卒業と同時に群馬県にある世界的に有名な宇宙・航空機関連の会社に就職し、製造技術の取得はもちろんのこと、学校では教わらないような日本企業独特の慣習やマナーなどを身に付けました。しかし人間関係で1年目は本当に辛かったと西島氏は振り返ります。そんな中でも「自分が変われば周りも変わる」という信念と「技術を身に付ける」という目標が自分を支えたと言います。上司の趣味に合わせて登山やランニングを始めたり、誰よりも朝早く出社したり、率先してトイレ掃除をしたりと、自分を受け入れてもらうために自身の行動を変えました。
働き始めて5年が経った頃に突然の訃報が母国から届きました。西島氏と同様に日本に夢と希望をもって留学に来ていた従兄弟(いとこ)が、ビザの更新ができずに一旦母国に帰り、再度来日しようとしていた最中に事故で亡くなってしまったのです。そのときの経験から西島氏は、再来日が難しい現状をみて、留学生を絶対に国に帰らせないで卒業後に就職ができるように支援をしていこうと強い決意を持ち、技術者のキャリアを捨て、2021年9月に(株)学び舎を起業しました。
企業と留学生双方に寄り添う
同社は主に中小企業と取り引きしていますが、受け入れ企業に出向き、どんな人材を求めているのかを徹底的にヒアリングして適材適所を意識しています。また同時に従業員に無理な働かせ方をしていないかを見極め、場合によっては断ることもあります。
一方、留学生に対しては、YouTubeなどには流れていないような日本企業ならではの風習や上司との人間関係などを教えています。
何よりも日本での仕事に対する向き合い方を大事に教えています。例えば、日本では新入社員に初めは雑用作業をしてもらい下積み経験を積んでもらうことが多いのですが、一般の留学生は、それがずっと続き自分がしたい仕事ができないと絶望し辞めてしまうケースが多いと言います。そうではないことを西島氏は前職での苦労と経験をとおして丁寧に伝えています。
付加価値を生み出す人材育成を
毎朝スタッフとともに企業理念「より多くの人たちに夢と勇気と希望、そして感動と笑顔をもたらし続ける」を確認して、日々の活動がぶれないように経営しています。企業と留学生へのきめ細かな対応が評判を呼び、企業からの新たな紹介が増えています。
今後は、海外から優秀な若者を呼び集め、技術訓練を行い、企業の付加価値を生み出していく人材育成プログラムを構想しています。これから日本の最低賃金があがり一般の企業が人件費をあげていくときに、大手などの取引先と価格交渉が行えるかどうかが重要です。社員が生み出す付加価値があれば交渉を可能にすると西島氏は言います。
SDGs(国連で採択された持続可能な開発目標)が今世界中で叫ばれ、多様性が重視されています。新卒採用や女性の正社員起用、障害者雇用などを切欠に企業体質が変わり、既存社員のモチベーションが変わった事例は多々あります。外国人雇用もその1つかもしれないと、取材を通して思いました。
(事務局 牧本)
◆会社概要…事業内容:外国人留学生の就職支援サポート、特定技能登録支援機関 所在地:市川市南八幡5-10-7 INGビル4F 資本金:500万円 従業員:10名(うちパート・アルバイト2名)