【企業訪問記】生き物本来の力がつくる、美味しい卵を届けたい

(有)宮本養鶏 取締役 宮本 大史氏(安房支部)

「神が余る」と書く、館山市神余(かなまり)。物語「南総里見八犬伝」最初の舞台でもあるこの土地で、代々営まれている養鶏場があります。

宮本大史氏の祖父が、愛玩系の鶏を飼ったのが事業の始まりです。戦時中の困窮でエサを買うことができず、一度は鶏を手放しますが、鶏が大好きだったおじい様は退職金を使ってひよこを飼い、養鶏を続けてきたそうです。小学生の頃から家業の手伝いをしてきた宮本氏も、お父様を手伝う形で入社しました。

約5万羽という規模は、寡占化が進む養鶏業の中では小規模です。生協を通して流通する卵、問屋などへ卸される高級卵、地元館山に供給している卵があり、地元への供給は全体の3割ほど。ベーカリーや洋菓子店、飲食店が多く、少数でも戸配をしています。中には個人のお客様もいるそうで、地元のつながりや顔の見える関係を大切にしています。

現在扱っている卵の種類は白、赤、さくら、名古屋コーチン、アローカナの5種です。赤とさくらの卵には海藻や木酢液、ヨモギ葉などを入れて美味しさの追求をしています。

めずらしい名古屋コーチンの卵は、15年前にお客様の要望で開始したそうです。こうしたブランド鶏は品種改良されていないため、産卵の回数も少なく、生産性がいいとは言えません。しかし同社ではあえて、そんな名古屋コーチンのヒナを愛知県から仕入れ、ひよこから自家育成するという手法をとっています。

「ヨウ素(ヨード)を使った卵、ビタミン卵などは、エサに栄養を与えれば2週間で生産できますが、生き物本来の力で『美味しい卵』を実現できたら、と思っています」と語る宮本氏。コクがありなめらかな黄身が特徴の名古屋コーチンの卵は、高級卵として百貨店などに流通しています。

今後の展望をうかがうと、「地元密着で安心・美味しい卵を売っていきたい」とのこと。自社で6次化するのではなく、卵を加工している現状のお客様とアイデアを出し合えるのが理想の姿。脈々と続く事業の陰に、お客様との密接なコミュニケーションがあることが伝わってきました。今後の展開が楽しみです。

 (事務局 小山)

◆会社概要…所在地:館山市神余4529(農場)、館山市八幡367-2(本社) 資本金:457万円 従業員数:24名(うちパート・アルバイト15名) 事業内容:鶏卵の生産と販売

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