【企業訪問記】創業文久年間、歴史に裏づけられた 地域の厚い信頼に応えて

(株)鈴木工務店 常務取締役 鈴木 勲氏(安房支部)

 千葉県南西部に位置する安房郡鋸南町で住宅建築、リフォーム業を営む(株)鈴木工務店の鈴木常務を訪ねました。鋸南町は東京湾に面した港町。内陸の山間部は房総丘陵、北端の富津市との境には鋸山がそびえ、海岸部は南房総国定公園に指定された観光の町です。

 地域で「おくまや」の屋号で知られる同社の設立は昭和28年ですが、創業は文久年間(1861年~64年、幕末新撰組の時代)とのことで、約160年の歴史を数えます。港町らしく、創業当時は船大工だったらしいこと、屋号「おくまや」の由来は昔居た「おくまさん」という女性から来ているらしいこと、社屋に隣接する建物で以前民宿も経営されていたお話しなど、歴史を色々と教えていただきました。

 鈴木氏は大学卒業後に他社でしばらく修行の後、先代の父から大手建築会社とコラボした木造住宅建築を始めるとのことで呼び戻され入社しました。その後、兄である現社長も入社し、兄弟で同社の屋台骨を支えています。

 地域での評判を伺うと、老舗の同社への顧客の信頼は厚く、また「監督個々のペースで仕事を采配できるスタイルが確立しているため、その監督指名で付くお客様もいます」と話します。また、行政の仕事や消防団など地域貢献活動に長く携わってきたことによるつながりの深さも信用となっているそうです。課題については「昔の縁故で食べてはいけない時代です。大手も入ってきており、時代に合ったノウハウや形を取り入れていかないといけません。また新しい人が入る中で、個々の仕事のスタイルを共有することも必要」と語ります。

 建築業界の現状はやはり人手不足、職人の大半が鈴木氏より年上という同社にとっても大きな問題です。鈴木氏は「多能工の職人をいかに育てるか。また、工務店、水道、電気設備といった同業他種のネットワークを築いていけるかが大事だと考えていますが、ネットワークの芽は個人の域を脱していない現状で時間がかかりそうです」と話してくれました。

 今後については「色々な人と出会い、つながっていけるように、他の仕事もしてみたいと考えています。道の駅『保田小学校』で土産屋をしたのもその一環でした。社員と前向きのベクトルを共有しながら取り組んでいきたいと思います」と抱負を語っていただきました。        

(事務局 逸見)

◆会社概要…所在地:安房郡鋸南町勝山353 資本金:3,000万円 従業員数:15名 事業内容:木造住宅新築、リフォーム、公共工事、土木工事他

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