【企業訪問記】ニッチ産業でもリスク分散〜先を見据えた事業展開を模索する~

(株)イハラアドバンテック
代表取締役 井原 義満氏(市原支部)

 今回は、市原市で自動車を中心に産業用コントロールケーブルの製造を営んでいる井原社長を訪ねてきました。同社は昭和42年に父親が創業された会社で、当初は精密引抜鋼管の製造をしていましたが、元請会社が台湾にシフトするとともに仕事も減少。そこで県行政の紹介もあってコントロールケーブルの製造を始めたそうです。コントロールケーブルは、自動車のあらゆる部分で使われており、ブレーキ、ボンネットやドアなど20種類以上になります。以前は同業社も多かったそうですが、激しい経済や需要の変動に耐えきれない会社も多く、今では独立資本で関東に構えているのは同社のみとのこと。

 そんななか今日まで生き残ってきた秘訣を聞いてみると、一社一事業に依存しないリスク分散がありました。始めた当時は新車用の部品を扱っていましたが、新しい仕様への対応や新車の売れ行きに依存する需要の不安定性から、輸出車の補修部品に徐々にシフト。もちろん各国の情勢リスクもありますが、数十カ国と取引があるため需要は均一化されるとのこと。また海外から日本製品の需要は高く、特にケーブルの耐久性は命に関わるため、質の良い同社の製品は安全性の面からも求められているそうです。他にも医療関係で手術台の組み立てや部品製造など他事業も手掛けることで、幾度の危機を乗り越えてきました。ただ近年の物価上昇の情勢とは裏腹に、元請や大手が値上げに踏み切れず、下請けが煽りを受けているとのことです。

 コントロールケーブルの製造は、高い安全基準や必要なノウハウが多いため参入障壁も高く、まだまだ需要はある業界ですが、自動車部品の電性化でケーブルを使わなくなるといった技術革新からも、絶対に無くならない業界とも言えなくなってきています。同氏はそうした趨勢を踏まえ、車用部品だけでなく医療業界の部品や民生用のホース、もしくは新しいモノの開発など、今までの経験や技術を生かして事業の幅を広げていきたいと展望を語られました。

(事務局 道山)

◆会社概要…所在地:市原市菊間2440 資本金:1,000万円従業員数:33名(うちパート・アルバイト27名) 事業内容:自動車・産業用コントロールケーブル製造・販売

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