【輝く中小企業の取り組み】ひろげて地域と想いをつなげる~地域の“いつも”を支えるクリーニング店の新たな挑戦~

洗濯上手 代表 大久保 貴幸氏(八千代支部)

大久保 貴幸氏

 クリーニング業界は大きな転換期を迎えています。かつて日本全国に16万件あった店舗が現在わずか6万件に減少し、業界全体が深刻な課題に直面しています。そうした中で、地域を明るくする新しい挑戦を続ける大久保氏にお話を伺いました。

北習志野の新店

誇りを持てる仕事が、次の担い手をつくる

 後継者不足という点においては、単に子どもがいないだけではなく、若い人にとってそもそも魅力ある商売に見えていないことが根っこにある、と繰り返し仰っていました。大久保氏にとって「やればやるほど魅力的だし、自分はこの仕事が大好きだ」とも仰っていて、実際に店に立ってお客様の反応を見たことで「こんなに喜ばれる仕事はなくしちゃいけない」と思い、家業に深く関わるようになったそうです。だからこそ、魅力がきちんと伝わり、誇りを持てて、休みや収入も確保できる形にできれば、若い担い手は増やせるはずだと同氏は考えています。

 では、その「魅力」をどう作り出すのか。そこで根幹にあるのが同社の理念である「感動を創造する」という言葉です。お客様だけでなく、従業員さんも協力業者さんも含めて、仕事を通じて感動を生むことが自身の誇りになると仰っていました。

仕上がりの違いが、価値になる

 一方で業界全体としては、かつて「いかに生産性を上げるか」に寄り過ぎた結果、機械化に頼り誰でもできる作業になり、技術者が育たなくなったといいます。印象的だったのは「違いはあるのに、お客様が知らないだけ。だから知ってもらうことが大事だ」という言葉でした。体験してもらいながら品質の違いを言葉にして伝える。それを面倒くさがらずに続けた結果、チェーン店では出来ない仕上がりを任されるようになりました。

 そして、その価値を続けるには、お金の話は避けられません。価格とコストについては、「送料無料」や「保管無料」という言葉の裏に実際の自社負担があると話されていました。だからこそ、値下げで戦うのではなく、きちんと手をかけて、その分の対価をいただく。また、経費削減は必要だが品質に直結するためのコストを削減するのは本末転倒だと考えています。消耗品の交換など「見えない部分」こそ基準をぶらさず守るべきだと語ります。お客様は工程ではなく仕上がりで判断するので、店側が“違い”を言葉にして伝えないと、価格差は理解されにくいという話がありました。

広げることと、地域で続けること

 そうやって価値とコストのバランスを取りながら続けていくには、分母をどう増やすかが重要になります。今回、同社は2月に北習志野店をオープンしました。新店を出した理由には、単に店舗数を増やすことではなく、商圏を広げて顧客の分母を増やすことにあります。クリーニングは近所利用のイメージが強いものの、実際には30分程度かけて来店するお客様も一定数おり、距離を少し広げるだけで対象市場は大きく拡張します。さらに、技術力や対応力に強みがあるため、その価値を必要とする顧客は地域外にも存在します。新店の開設は、そうした距離やエリアに縛られず結果として売上の安定や成長に繋げる想いもあります。

 また、広げることだけが答えではなく「地域で商売をする意味」も強く語られていました。クリーニング店はお客様との接点が深く、地域の“窓口”みたいな役割を持てる仕事だといいます。その一方で、商店街が成立しなくなってスーパーやチェーン店ばかりになると、街は便利で良くなる反面、つまらなくなるし一気に衰退すると危機感を強く仰っていました。

継承は「続けること」だけではない

 最後に経営と継承について伺ったところ、「継承はこの仕事をそのまま続けることだけじゃない」と最初に言い切られていたのが印象的でした。仕事そのもの以上に、考え方や想い、人としての生き方、そして経営で大事にしている判断基準を渡すことが継承なのだ、というお話でした。もし将来クリーニング業が厳しくなるなら、別のことに挑戦してもいい、そのときも理念や生き方を軸にして決められればいいと同氏はいいます。

 全体を通して、縮小する業界を嘆くよりも、「まだできることがある」「やり方次第で仕事は面白くできる」という前向きな熱が事業継続の秘訣だと感じました。数字で現実を直視しつつ、技術と品質、社員やお客様との関わりの中で“感動”を生み、その価値を言葉にして届ける。そして地域のつながりの中で、次の世代が誇りを持てる働き方をつくることが同氏の夢であり、原動力となっています。

(事務局 鈴木)

♦会社概要…事業内容:衣類・寝具他繊維製品のクリーニング 所在地:八千代市緑が丘2-39-4 従業員数:5名(内パートスタッフ3名) 入会年:1989年

 

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