【輝く中小企業の取り組み】「息子の存在が原動力」未来につなげる放課後等デイサービスの挑戦~ 一人ひとりに合わせた療育(発達支援)
(株)HighFive 代表取締役 五味 秀俊氏(習志野支部)

障がい者委員会で委員長を務める五味氏は、八千代台に「放課後等デイサービスcomore八千代台南」を昨年4月に開所。同事業所は、小学1年生から6年生までの障がい児を対象に、個別支援と集団支援の両輪を軸とした療育(発達支援)を行っています。なぜ異業種のサラリーマンだった同氏がこの業界に飛び込み、経営者となったのか。そこには当事者家族としての強い想いがありました。
開所のきっかけと込められた想い
以前は保険会社に勤めていましたが、コロナの影響で対面での営業が減ったことで、先の見えない仕事への大きな不安があったという同氏。さらに、障がいのあるご子息が小学校に進級する際、進路についてとある懸念を抱えます。子どもたちの成長過程において、一般的に学校教育に守られるのは高校3年生までで、その先の進路は自分の意思で決めなければなりません。しかし、重い障がいのある方々はそれが難しく、進路を決定していくまでにあった経験や得意なこと、興味が強いことを知らないままだと、持っている能力によっておのずと進路が決まってしまいます。卒業後は自宅やグループホームなどで生活し、見守られるだけの方々も少なくはありません。そういった実態がある中で、ご子息のように、どうにか子どもたちの将来の選択肢を広げてあげられないかと考えた末、放デイに行き着いたと話します。渡りに舟で、同友会の会員から声がかかり、元々は託児所のあった場所を受け継ぎます。1年の準備期間を経て独立し、開所に至りました。
「個別活動」と「集団活動」、それぞれの療育プログラム
comoreのサービスの特長に個別と集団、それぞれの療育プログラムがあります。個別活動では、1対1または障がいの特性が近い数人のグループに分かれて、短時間の別室支援を行います。読み書きが難しい、数やお金が数えられないといった学習の遅れや、コミュニケーションに課題を抱える利用者。発言がない、排尿・排便が自立していない、手先の運動に困難を抱えるなど生活に必要なスキルに課題を抱える子どもたちに対して、テキストや絵カード、微細運動トレーニングツールなどを用いて、困りごとに適したプログラムを考え、実施しています。利用者がどこにつまずいているのかをスタッフたちの知識や経験を活かし、仮説を立て、検証を重ねることで課題をクリア。利用者もスモールステップで「できた!」を実感でき、自己肯定感を高めていきます。
集団活動は、カードゲームやボードゲームなどの遊びを基本としたプログラムです。順番を守れなかったり言葉づかいが悪かったりと、遊びを通して利用者それぞれの苦手な部分が浮き彫りになるといいます。また、SSTといった他者とのコミュニケーションの機会をつくったり、書道の先生を呼んで硬筆教室を開いたりするなど集団活動の中で楽しみながら、協調性や社会で必要なスキルを身につけています。
選ばれる放デイとなるために大切にしていること
comoreが選ばれる理由に、遅くまでの受け入れや送迎の対応もあるといいますが、雰囲気の良さが大きいのではないかと語る五味氏。他所では子どもが輪に入っていけなかったけど、ここは大丈夫そうだといったご家族の声を聞き、その要因にはスタッフ一人ひとりのポテンシャルの高さと、持ち味が前面に表れるような支援で関わっていただいているからだろうと口にします。ただ、経営についてはまだまだ分からないことが多く、この1年間は試行錯誤の日々でした。例えばスタッフに判断を任せ過ぎても混乱が生じるため、どう経営方針と業務内容を結び付けるかといった気付きは、同友会での経験や出会いが活きたとのことでした。
最後に、今後のビジョンについて伺いました。「息子の成長とともに会社を育てていく必要性を感じています。彼らの自立までの受け皿となれるような環境を整えていくことがこの先の大きな課題ですね。息子の存在が経営の原動力になっていると思います。」
(事務局 眞山)
♦会社概要…事業内容:放課後等デイサービス 所在地:放課後等デイサービスcomore八千代台南 八千代市八千代台南1-7-2 従業員数:8名(正社員2名、パート・アルバイト6名) 入会年:2018年
