千葉県
商工労働部
千葉県産業情報
ヘッドライン
中同協 e.doyu 会員検索 JOBWAY
 
 

成長企業の実践に学ぶ!
足元を固め、将来に手を打つ!
     〜全社一丸で動く仕組み〜

    (株)昭栄美術 代表取締役 小林利昭氏(市川浦安市部)

 昨年の12月に築地の聖路加タワーに本社を移転した鰹コ栄美術を訪問し、小林利昭社長にお話をうかがいました。

独立、職人集団から「会社」へ
 昭栄美術は1979年に設立。展示会・イベントの企画立案から、設計、施工、運営までを行う「ディスプレイの総合企業」です。現在社員数は約250名、浦安に工場を持ち、大阪営業所、中国の現地法人にまで拡大を続けています。
 小林社長は28歳のときに職人から独立して会社を設立しました。40歳までは自分も作業服を着て仕事をしようと、覚悟の上でのスタートでした。
 同友会の市川浦安支部に入会して、会社を大きくするためには「仕組み」が必要と学びます。まず作業日報を根付かせようとしますが、当然社内は職人ばかり。汗と技術の世界では、作業日報を書かせることも難しければ、経営理念を作ってもまともに発表すらできない状況でした。
 「自分の会社の足元を見ないで、そのまま実践しようとすると失敗する」と語る小林氏。一方で「すぐにできないことも、将来必ず実現させる」という強い信念を持っています。作業日報は、それ自体が利益を生み出すものではありませんが、会社を長期的に発展させるためには必要不可欠なものであると考え、根気強く取り組み、同社では15年をかけて習慣化しました。

社員が主体的に動ける仕組みづくり
 このように長年つくりあげてきた仕組みが、現在の経営のベースになっています。
 例えば、作業日報からは作業にかかる時間や人員・技術がわかるため、@原価が割り出され、正確な見積りを出せるようになる。A社員の成果を公平に測る基準ができる。B作業手順書(マニュアル)を、作れるようになる。といった効果が生まれます。
 ポイントは、日々日報を書いている現場の社員が主体的に@〜Bに関われるという点です。同社では現場の社員の声でマニュアルや原価計算の基準が、より精度の高いものに見直されています。
 また、目標と成果の検証についても同様です。ITを活用して、部門ごとの売り上げ計画、損益分岐点、利益がシステムを通して誰でも見られるようになっています。達成度合いが一目で見られるため、社員一人一人が部門に対する責任感を持つことができるとともに、チームでの情報共有が進んでいます。
 さらに、自分の目標の達成度合いによって給与(成果報酬部分のみ)が変動しますが、その計算もシンプルで分かりやすく設定しています。「社員が主体的に動ける」「誰が見ても分かる」というところに重点が置かれた仕組みです。

社員への信頼と経営者の責任
 社員が主導になる社内風土の実現で、小林氏が強調するのは「社員との信頼関係」です。 例えば改善提案については、社員がSNSを通してどんなことでも提言、意見ができるように仕組みを作っていますが、これも導入までには時間を要しました。中途半端に導入して、要望を集めるだけになってしまえば、社員の不満が顕在化するだけになりかねないと考えたためです。
 「経営陣が社員のことを信頼し、要望に明確な答えを出していける自信があるかどうか」「受け皿となるチームがつくれるかどうか」。時間をかけて検証したうえでの導入でした。 
 現在では年間420件程の提案があがり、業務改善のプロジェクトチームで議論したのち、そこで実行できるものから取り組み、改善の進捗まで公開しています。実際に、「自分の声で会社が変わる」「自分たちで変えられる」という実感は、社員のモチベーションアップにつながっています。 
 また、移転した新社屋も社員がアイディアを出し合って作られています。明るくきれいな商談ルーム、靴を脱いでくつろげる休憩ルームなどが完備されており、ワンフロアーでコミュニケーションの取りやすい設計です。また、就業時間後に社員同士が集い、自由にお酒が飲める「スナックルーム」は、まるでおしゃれなバーか、カフェのような空間。豊かな気持ちで仕事ができるようにという願いが込められています。しかし、移転についても社長は予算に対する決済をしただけで、「社員を信頼して任せる」という姿勢を貫いてきました。
 こうした社員との信頼関係はあくまでも社員の根本的な欲求が満たされてこそ成り立つと小林氏は語ります。これまで、「社員の幸せはお金と夢と休み」とあえてシビアな言葉を自らに言い聞かせ、経営努力を重ねてきました。決算ボーナスを欠かさずに支給してきたことが覚悟を物語っています。

長期的な視野を持ち続ける
 同社は、売上が10億円弱だった20年ほど前に、大手印刷会社から、「合併してディスプレイ部門をやらないか」という依頼をうけました。昭栄美術のこれまでの実績を高く評価する提案でしたが、小林氏は即座に断りました。自分たちの築いてきたものが資本の大きい側に吸収されてしまうと考えたからです。
 その後、その会社には昭栄美術の子会社を渡すことで決着がつき、新設合併で新たな会社が誕生します。しかし同社は時の売れ筋の商品に飛びつき、一挙に業績を伸ばした後で受注が激減。営業が立ち行かなくなりました。小林氏が雲行きに不安を感じ、昭栄美術とは完全に資本関係を断った後の出来事でした。
 この時の経験は、その後の経営姿勢にも影響しています。一気に伸びる需要は引くのも早いもの。経営は常に長期的な視野を持つことが大切と考え、今から4年後の東京オリンピックに対しても楽観的な見方はしていません。むしろオリンピックの準備期間に幕張メッセなどの大型施設が塞がってしまうことは、同社にとって痛手であるため、その穴埋めをする新たな仕事を創出しているといいます。

経営者の最大の仕事とは?
 また、あくまで「昭栄美術」というブランドを守ってきた小林氏は、「社長の最大の仕事は価格を決める事」と強調します。これは経営者が自社を安易な価格競争に陥らせず、価格に対する決定権を守り、維持することを意味しています。
 例えば同社では、顧客の分散にたえず目を配っています。売上高上位3社の取引先の売上が、仮になくなった時、損益分岐点の売上高を割るようなシェアは持たせないようにしています。(例:損益分岐点比率が90%だとするならば、上位3社の売上高合計の割合は全体の10%以下に抑えるということ)それ以上のシェアを持つと、その会社が値下げを要請してきたときに応じざるを得ないためです。生産性を上げることや、顧客を増やし、売上を上げるといった部分は社員に任せることができても、「値段を決める」というのは会社の最大の戦略であり、経営者が責任を持つ部分です。小林氏の手帳は、自社の情報と、その時に同規模の同業他社の情報がぎっしりと詰め込まれています。

 創業37年で大きく飛躍を遂げた同社ですが、新たな仕事の創出、女性社員の働きやすい環境の整備など、会社としての挑戦は止まることがありません。今後の飛躍に注目が集まります。
                              (文責・事務局 小山)

 


ー一覧へへもどるー

事務局
〒260-0015
千葉県千葉市中央区富士見2-22-2
         千葉中央駅前ビル7F

TEL 043-222-1031 
FAX 043-222-8207
≪時代を切り拓く!若手経営者に聞く≫
≪千葉同友会の足跡を探る≫
≪功労者をたずねて≫
≪我がまち探訪記≫
≪千葉同友会案内パンフレット≫